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許可が取れないケース>イナムラ様
![]() イナムラの現場の完成予想図
59階建てのビルの床の半分を担っ ている 株式会社イナムラは、建設業の中でも内装仕上げ工事業で建設業許可をとっています。内装工事でも床の工事を専門としています。 25歳から内装工事を始め、先代の親方が亡くなったときに事業を引継ぎました。2年前に個人事業から株式会社にして現在の専従の職人は8名です。 家族は妻と息子10歳、娘7歳です。 ― 内装業と一言に言ってもいろいろとご専門があるんですね うちは元請けの会社から内装の専門ごとに仕事が発注されてくるのでそのようになっています。クロスはクロス専門、床は床専門、カーテン工事はカーテン専門と分かれています。 イナムラは床専門ですが、床でもフローリングはやりません。絨毯、ビニールタイル、塩ビのシート、ベランダに張る防水、すべり止め用シートなどが専門です。たとえば、病院の場合ですと機能重視なので抗菌シートの床であるとか、その用途によっていろいろな種類の床材を使用します。 現場としては、大規模マンション、テナントビル、公共施設などです。必要な材料は、すべてメーカーからそれらの現場に届けられるので、事務所も在庫も持たない事業形態で売上は技術料だけです。
― 日本許認可センター(以下許認可センター)をどのように活用していますか 許認可センターの山内さんとは先代の親方のときからのつきあいです。 先代が亡くなった時に私が職人たちのトップにたって仕事をまとめていくことになりました。そこで、先代のときからなにかと相談にのっていただいていた山内さんにお話ししまして、個人事業主として建設業許可をとることにしました。それが今から5、6年前のことです。 その後、会社組織にしたときには会社としての建設業許可の取り直しをお願いしました。
― 建設業許可を2回申請したということですが、1回目が先代の事業を継いだ時ですか そうです。最初は個人での建設業の許可申請をお願いしました。 許可を取らないで仕事をすることもできますが、元請けの会社からの信用を落とさないことがなにより大事だと考えたことと、1工事500万円以上の工事を受注するには建設業許可が必要だったという2つの理由です。 ― その後法人にしたのはなにかきっかけがあったのでしょうか 先代の親方が亡くなって事業を引き継いだ時に山内さんに税理士さんを紹介してもらいました。その税理士さんとの相談の中で、先々大きくしていくことを考えて株式会社にしました。 ― そこで法人として新たに建設業の許可を取り直すことになったわけですね そうです。会社として新たに建設業の許可が必要でした。 個人の時にとった許可はまだ有効期限まで間がありました。 社長の会という同業者の繋がりがあるのですが、そこで「法人化しようと思っている」という話をしたときに「まだ更新まで期間が残っているのにもったいない」という意見もでありました。確かにそういう考えもあると思います。個人の時にも躊躇なく建設業許可を申請したのと同じように、このときも迷わず山内先生に手続きをお願いしました。 そうですか。それで2度目の申請手続きはどうでしたか 一度目の個人事業の時もそうでしたが、私がやったことは名前を書いて印鑑を押したぐらいです。あとはすべてと言っていいほど任せきりでした。 役所に何度も行くということは、現場を抱えている身ではとてもできないことなので、たいへん助かりました。 書式ひとつとっても慣れていない者がやるよりは、ここは餅は餅屋だと思ってお任せしました。 私も技術職なので自分の仕事にはこだわりがあります。山内さんも同じようにご自分の仕事にはプライドを持っていらっしゃるので安心してお任せしました。
― 前から山内さんを知っているということでのご依頼だったのでしょうか 先代のときから山内さんとやりとりをしてきて、この人ならなんでも相談してみようと思っていたので頼むのなら山内さんしかいないと思っていました。 ― 山内さんはどんな人ですか?どこがいいのですか 人柄がぼくとつで、始めて会ったとき、巨人の星の左門豊作のような人だなと思いました。 タンスみたいな人だなとも。 ― いい表現ですね。タンスみたいですか? どっしりと安定感があります。しかもいつもにこにことしていて。正直言って、行政書士という堅苦しい肩書きの人に思えない。とっつきにくいイメージがまるでないのです。行政書士の方は他にも知っていますが、こんなにくだけていて、話しやすい人はいません。
― 率直なところ山内さんの料金体系について、依頼されたご経験から高いと思われますか いえ。むしろ良心的だと思います。頼んだ仕事以外でもいろんな提案をしてもらいますし、更新時期ごとの連絡や暑中お見舞いや、いろいろといただきます。 それだけでも全然違いますよね。連絡のタイミングはつかずはなれずでちょうどいいですね。あまり頻繁でも「そんなに心配されているんだろうか」と思ってしまいますから。 「そろそろこういう時期なのでご準備ください」と早めに連絡をくださるので、あわてたこともバタバタしたこともなく、ちょうどいい感じです。
― 株式会社イナムラの今の現場について教えてください 今受けているこの工事は、地上59階建と地上47階建の2棟の建築工事で、施工主から元請けが受注し、株式会社イナムラは元請けから59階建ての建物の方の半分の床工事を受注しました。工期は1年半です。 1年半と言っても、内装工事は工程の中では最後の方の仕事ですので本当に忙しくなってきたのは今年に入ってからです。 ― 私たちはビルのできあがっていく様子を外からしか見ていませんが、建物は下の方から出来ていきますね。そうすると、イナムラさんも下から順番に仕事をしていくのですか 下から順番にしていきます。建物の床は2重になっていて、二重の床の間には配管が通っていたりするのですが、二重床にする業者さんがいて、その工事が終わるとフローリングが入って、クロスが入って、次にうちがシートを貼ります。そんな風な順番で工程が決まっています。そうやってどんどん上に上がっていきます。工程の中ではうちが一番最後なので、前工程が遅れると一番しわ寄せがくるところでもあります。 ― 金額的にはどのくらいの規模ですか 月に約4人の職人が入って、250万円くらいです。計算は基本的にはへーべー単位でします。細かくて手間のかかる部分の計算は広さではできないので、1日いくらという計算をして最低のラインをある程度は確保しています。それらは元請けの営業さんと話をして決めます。 ― 工事をする上で心がけていることはありますか 49階と59階のビルで1つの建物に元請けは2社入っています。その元請けの1社から株式会社イナムラが仕事をもらっているわけですが、我々の元請けの会社の方が受注量が多いのです。それは、下請けの我々技術者の技能が高いからだと自負しています。 その評価は我々の先輩が培ってきたものですから、その努力をむげにしないように、次の受注に繋がるように、いい仕事をすることを心がけています。 ― 建築の世界というか、技術屋さんの世界はそういう世界なんですね 親方から子方へ仕事を教えていって、それがどんどん伝わっていくから、親方の教え方の違いによって、同じ材料で同じ箇所を担当しても微妙に張り方が違うということがあります。それは面白いですよ。 ― そういうところを全部発注者は見ているのでしょうか やっぱり見ていますよね。角のおさまりなどは見ればわかるし、きちっと角に入っていれば印象がいいですよね。 ― そういうところは購入者からののちのちのクレームに繋がったりするところですか それは繋がります。マンションのクレームはすごいですよ。俗にモンスタークレーマーという方が いますが、ドアを開けると付箋だらけらしいです。直す箇所に付箋を貼ってあるんです。 ― クレームがついたらどうなるんですか。呼ばれるのですか 当然直します。床の工事ではほとんどないのですが、床であるのは他の業者さんがモノを落として傷つけたとか、床鳴りがするとの階から言ってきて張り替えるということがあります。 クロスの場合はぶつけられたり、ひどい場合は、引越時につけた傷もクレームで出してくるらしいです。 ― そういう時の費用負担はどうなるんですか それは施主が負担します。 ― あきらかに工事が不備だったときというのはどうなるんですか さあ、どうでしょう。そういう仕事はしてないので、わかりませんね。 工事というのは、建築、設備、電気と別れています。 建築は建物を造る。設備は配管。そして電気工事ですね。 電気屋さんが電気をつける穴を間違えてしまってボードを張り直すというときは、建築が電気に請求を出す。設備屋さんが水を漏らしてしまって床を張り替えたら建築から設備に請求をします。そういうことはありますね。 ― いろんなことがあるんですね あります。この商売はおもしろいですよ。やめられないです。 ― 大変そうに見えますけど、おもしろいですか 自分に合っていたのでしょうね、この仕事が。モノをつくることが好きだし、人を育てられることが楽しいです。なにより終わった後の達成感ですよね、一番は。 「おつかれさまでした~」と言う、あのときは、なにものにもかえられないいい気持ちです。
― 1回目の建設許可をとった先代から引き継いだ頃は どんな感じだったのでしょうか 先代の親方が営業的なこともやっていましたので、そういう営業がいっときとぎれました。他の会社が敬遠するような仕事の方が多かった時期もありました。 ― それは先代の力が大きかったということでしょう やっぱりそれはありました。私も先代に負けないように頑張って、やっとなんとかここまできました。 ― そのときは稲村さんが会社を背負っていた状態だったんですか 亡くなる2、3年まえから体調を悪くしていましたので、お金のこと以外は全部私がやっていました。受注から人の手配などです。営業まではやれなかったので営業活動をしていなかった我々のところに余った仕事がくるような状況でした。 いい仕事を取るためには、元請けの会社の営業さんと仲良くして情報を仕入れることが大事です。 元請けの会社にちょくちょく顔を出して地道に仲良くする中からまたいい仕事もくるようになりました。 ― どんな営業活動をされるのですか 元請けの会社に夕方行って終業後にみんなで缶ビールを飲むだけでも違います。 あとは休みの日にみんなで釣りに行くとか、そういうつきあいです。 そういうことがとても大切だと思います。
― 今後の抱負をお聞かせくださいますか 株式会社イナムラとしては、職人さんをもっとたくさん抱えて、仕事をたくさん受けられる体制を備えていきたいと考えています。建設業にとっては厳しい時代ですが、他よりも技術力および団結力を上げて、「イナムラに任せれば大丈夫だ」という信頼を得て、もっと受注を増やしたい。 そのためには若い技術者を育成をしていくことが重要です。こういう業界も年配者が多くなってきているので、若い人の確保が大事なのですが、やりたがらないので難しいですね。 ― 若い人はどうやって見つけますか 実は個人的な夢があるのです。それは、職業訓練校の教官になりたいということです。 人に教えるのが好きなので、自分が教えてもらったことを人に教えたいという希望があります。今は自分のところの職人に教えていますが、もう少し枠を広げて教えるのもいいなと考えています。 ― 許認可センターへのご期待があれば 山内さん自身がもっとはなやかな世界に行ってほしいと思っています。テレビに出るくらいしてもいいほど個性的なキャラクターを持っているので、じわじわとホームページから商売が広がっていくといいなと思って応援しています。 |
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![]() 竣工間近の現場の看板前で (左)株式会社イナムラ 稲村孝幸社長 (右)許認可センター 山内隆司
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お忙しい中、有り難うございました。
※ 取材日時 2008年4月 ※ 取材制作:カスタマワイズ |
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